基本情報
代表者 | 黒澤 正太郎 |
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牛舎 | フリーストール牛舎 |
頭数 | 搾乳牛81頭、育成牛43頭 |
牧場所在 | 千歳市 |
〝男子禁制〟
搾乳は代々引き継ぐ女性酪農家の重要ミッション
札幌市から車で約60分、地平線が空に続く平野の小高い丘の登り口に、有限会社黒澤酪農園の看板が掲げられています。黒澤美香(よしこ)さんは、この丘を中心に約50ヘクタールも広がる広大な農場と120頭超の乳牛飼育をご家族で運営されています。雲海も発生する抜群の自然環境
「ここから眺める景色は見飽きないのよ・・・」黒澤家に嫁いでから十数年という美香さんですが、仕事の合間のリフレッシュ方法をうかがうと、目を輝かせながらこうお答えくださいました。
早朝、眼下に雲海が広がることもあるという小高い丘に牛舎を構える(有)黒澤酪農園。抜群の環境にあるその牛舎で、120頭超の乳牛も伸び伸びと自然を享受しています。
岩手県で酪農を営む実家を手伝う中で当然のようにこの世界への興味が高まり、中学生の頃には進路を固めていたという美香さん。酪農学園大学在学中にご主人の正太郎さんと出会い、その後、念願叶って酪農家となりました。その想い入れの強さは「酪農家でなければ嫁がせなかったと後日、実家の父から明かされました」というほどの筋金入りだったようです。
義母から伝承した気遣いの搾乳は〝男子禁制〟
義父母を含め家族総出で当っていた作業は、ここ4年でご夫婦がメインとなりました。別棟の牛舎も含め作業範囲は多岐にわたりますが、こと搾乳に関しては代々、女性が担当する重要な役割となっています。というのも、黒澤家ではデリケートな牛が多く、慣れた女性の搾乳でなければ乳量が少なくなるからだといいます。寝床の掃除にご主人が牛舎に入った際でもオドオドしたり、鳴き声をあげる、緊張しているのが分かるほど。先代担当の義母からは「搾乳は男子禁制だからね」と作業を引き継いだと笑います。
実際、「搾乳のための牛追い時点から動作を観察していると、個々の体調変化や発情期も分かります」と女性ならではの細やかな気遣いが、非常に重要なポイントになっています。女性でもあまり馴染みのないヘルパーさんだとやはり違いが出るため「なるべく静かに、またいつもの手順でなるべく変化させないように作業を進めることが上手くいくコツ」と日々、心を配ります。
〝普段通り〟を続けて安定経営
先代も現役の中、夫婦揃って家業を始めた頃は、どうしてもお手伝いの感覚が強かったといいます。それが徐々に仕事を任されるようになってからは、長期的な視点で将来の事業展開をにらむように大きく変化したといいます。
外的環境の変化により、従来の運営手法では経営が難しくなることも想定されていますが、「大変かも知れないが、自分たちなら続けていけると信じてやっていくだけ」(ご主人)と表情を引き締めます。今後、家畜人工授精師の資格を活かして自家繁殖にも積極的に取り組み、さらなる頭数増加を狙います。
サツラクでは、毎日ミルクローリーでの出荷後、乳質検査が行なわれ、高品質乳の生産が求められます。美香さんは「毎日、普段通り搾っているだけ」とさらりと口にしますが、年中無休、高いクオリティを保ち続けるには、細やかな気配りの積み重ねが背景にあることは間違いありません。