基本情報
代表者 | 弘中 敏裕 |
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牛舎 | フリーストール牛舎 |
頭数 | 搾乳牛60頭、育成牛他50頭 |
牧場所在 | 恵庭市 |
”生命産業”としての酪農の基本理念を実践
自信をもってお届けできる高付加価値牛乳を生産
稲作、畑作を中心とする農家から酪農専業にシフトして以来、約40年の歴史をもつ弘中牧場。市街地からほど近いエリアながらも近隣には酪農家が多いため、まっすぐに延びた直線道路の両脇に青々とした牧草地が広がる自然豊かな環境の中に位置しています。
人生最大の転機
そうした恵まれた環境の中で、今では110頭あまりを飼育する規模となった弘中牧場ですが、酪農家二代目として家業を継承した敏裕さんにとって、1988年に人生最大の転機が訪れました。
工業団地の区画整理のため、父の代から広げてきた牧場の移転を余儀なくされたのです。新天地でゼロからの出発に直面し、その後の牧場経営の展望に考えを巡らせる日々が続いたといいます。
周囲の同業者や関係者からアドバイスを得、数多くの牧場を視察する中で、ひとつの結論に達しました。家族の限られた労働力でまかなえ、十分に目が届く規模の牧場にしたいという考えから、「フリーストール、ミルキングパーラー方式」の採用を決めたのです。これは、牛舎内で牛を必要時以外は繋がず自由に動き回れるようにする一方、朝晩の搾乳時にはミルキングパーラー(搾乳室)に牛を集めることで、搾乳作業を効率的にまとめることのできる方式です。
ちょうどその頃、結婚により新たな家族が増えたとはいえ、大規模な施設や機材を導入できる規模でもなかったため、「効率的な作業が実現できるこの方式を導入したおかげで、これまで何とか少人数でもやってこられたんだよ」と、敏裕さんは移転時からほぼ倍の飼育規模にまで拡大したこの四半世紀を振り返ります。
高付加価値「NON-GM牛乳」生産への挑戦
移転から10年ほどが経ち、新牧場の経営も安定期に入った頃、新たな転機が訪れました。消費者団体からの要請を受け、サツラクが非遺伝子組換え (NON-GM) 飼料のみで牛を育てる新規事業の参画者を募り始めたのです。
その頃、自らの生産物に自信をもって送り出せているか、付加価値をどのようにして生み出していくか、といった将来の牧場経営の展開について思案していた敏裕さんにとって、この新事業は、より安全でより自然な状態の牛乳を求める消費者からの求めに応じることのできる大きなチャンスと映りました。
ただ、完全な非遺伝子組換え飼料のみを使用するため、入手できる飼料の種類は限られ、しかも購入単価も高くつきます。さらにバランスのとれた飼料を設計するための工夫、技術の習得など、業界に先駆けての取り組みなだけに越えるべきハードルは数多くあり、参画を決めるまでには大きな不安があったといいます。
そうした中、参画の決め手となったのが、サツラクからの完全バックアップの約束でした。消費者からの直接の生産依頼に応じ、かつこだわりをもって高付加価値生産物を送り出したいという敏裕さんの強い想いは、これで実行に移すことができたのです。
こうして生まれたのが、限定11戸の酪農家でのみ生産されるNON-GM牛乳を使用した「酪農家限定シリーズ」です。
こだわりの生乳を原料とするだけではなく、生産方法にも特徴があるこの製品。一般的な高温殺菌ではなく、手間と時間を要する「低温殺菌」で仕上げたことにより、本来のふくよかな風味や甘み、まろやかなコクなど生乳により近い感覚が味わえます。
消費者の願いに応える生産者の熱き想い
多くのハードルを越えて生産されているNON-GM牛乳は毎日、専用のタンクローリーで集められ、専用の製造工程で製品化されています。また、限られた酪農家による生産だけに、「生産者の顔が見える数少ない製品」(敏裕さん)と自認、大きな緊張感を覚えるといいます。
NON-GM飼料に加えて乾草などの自給飼料にも配慮。質、量ともに少しでも高めていく努力を続けるほか、良いエサを生み出すための畑や土にも細かく気遣うようになりました。NON-GM牛乳の生産を通じて、牛だけではなく食物や土、食物連鎖につながるすべての存在が健全であることの重要性を再認識するに至り、酪農は〝生命産業〟であるという原点を強く意識しているといいます。
自然を相手とする仕事だけに、思い通りにいかないことが多い反面、「それが面白みでもあり醍醐味」と笑う敏裕さん。自信を持って送り出している高品質乳をまずは口にしてもらい、価値を納得してもらうことを最大の喜びに、「我々、生産者の熱い想いを商品を通じて伝えられればうれしいね」と頬を緩めました。